そして音が聞こえなくなって気がついた。
こっちこっち、と手招きをする巧に。
巧の口元は微かに動いている。
その動きを音にすると……。
『こ』
『っ』
『ち』
『お』
『い』
『で』
『こっちおいで』……?
首をかしげる私を見て、フッと笑う巧。
また、その唇は動く。
『は』
『や』
『く』
私も口の動きだけで言葉を伝える。
『わ・か・っ・た』
モメているっぽい圭と樹の所から、巧がいる少し離れた所まで、二人にバレないように向かう。
だって……二人に怒られるもん。
なんの理由もなしに、『巧に近付くな』とか言われるんだよ……。