いや、そうかもしれないよ? 確かにそうかもしれない、私を助けたのかもしれない。 だけどさ……。 「あのさ、この手……」 私の口を塞いでいる樹の手を掴む。 「離してくれない……?」 私は精一杯の力で樹の手を口から外した。 その時……樹の口角がニヤリと上がった事には全く気付きもしなかった。