「あ、おはよ、ジロー。ねぇ、コーヒー貰ったよ?」


マグカップにお湯を注いでいるスラリと細身の彼女が振り返る。


想像してたよりも明るい反応に少しだけ心が軽くなった。


どうぞ。コーヒーなんて好きなだけ飲んでくれ。


そんで『じゃ』なんて帰ってくれたら最高なんだけどな。


時計の針は日曜日のけだるい午前中。


いつもだったら『またね』とホテルを後にすればいいだけの朝だけど。


今日は違う。俺の自宅。


「……ねぇ?誰か亡くなったの?」

いつもと違う朝が静かに始まっていた。