「あれ、駄目なんだってさ。教師からそういうプレゼントとか貰っちゃ駄目らしいぞ」


「そうなんですか?」


少しわざとらしいほどに『無垢』って感じの表情に富永が、「ほう――…」なんてすっかり騙されて感嘆のため息をついている。


「この前校長に聞いてみたのね。したら『そりゃ駄目でしょう。本当なら処分対象です』って言ってたのよ、奥様。世知辛い世の中よね。」


「あたしどうしよう?知らなくって…」


なんて言いながら、


「分かってるわよ、アナタは知らなかったんですもの!」


少しばかりふざけ出した俺に『無垢』の表情のままで、一瞬だけ鋭い視線を送ってくるあたりはさすがだ。


(分かったよ。サクッと終わらせるよ!)


「だからさ、処分受けたくないならお金はらいなさいよ」


「え?あたしが?」

(声のトーン微妙に下がりましたけど、大丈夫?)


「他に誰がいるのよ。ってかいくらなんです?その本」


すっかりオネエ言葉が板についてきた。


「あたし今……これしか持ってない」


白い手に乗せられたのは一枚の五千円札。