「ジロー今頃香織を口説いたりしてねェだろうな?香織の女っぷりにクラクラすんじゃねェぞ?」


「してねェよ。アホか」


ガタガタと椅子に座るとコーヒーを注文する修司。



「体は?」「大丈夫よ」なんて微笑みあう幸せそうな夫婦は相変わらずで。



人は皆いつの間にか前に進んでいると実感する。



そう、俺以外は皆進んでいった。



帰り際「なんの役にも立たなくてごめんね」という香織。


そうでもなかった。



白川の絵を悲しい感じるのは俺だけじゃないって分かったから。



少なからずおかしいと香織も感じていたと分かったから。



ひとり道を歩きながら香織の言葉を思い出す。



“前はもっと投げやりな感じだった”俺。



そんな俺がひとりの人を気にしてわざわざ休日に歩き回るなんて……確かに変だ。



ねぇ白川、キミなりの必死さが俺を動かすみたい。



おかしいね、あんなに可愛くないキミなのに。