夕べからずっと俺の中で悶々としていたこの『白川の希望を断ち切る』って作業ってヤツがやっと終了した――

ハズだったのに。

返って来ない返事を求めてもう一度振り返ると光のなかで白川はうつむいていて、顔は濡れたような真っ黒な髪に覆われていた。


(ああ、さすがに泣くか)



「……白川」



髪に覆われているその表情は伺うことができないけれど。


基本的に俺ってば涙には弱いのだ。


「白川、大丈夫か?」


「ちょっと……待って下さい。心の準備が――」


(そっか。そうだよな。いきなり、進もうとして道が閉ざされたんだもんな)


「……うん」


作品の整理をそこそこに切り上げ、作業台に腰掛け口にくわえた禁煙パイポを上下させる。


(どうしたものだろうか)


帰りたいけど、さすがに『じゃ』と置いてかえるには気がひけた。


それはきっと白川が制服を着ていて、一応は指導担当生徒だからだ。