倉澤先生というのは、俺の以前のアルバイト先『倉澤アトリエ』の所長だ。

さらには立石美術大学の出身で、この大学の推薦入試を受ける生徒を毎年1人か2人、この界隈の希望者から選抜する権利を持っている。

言ってみればヘッドハンティング……いや、スカウトマン的な役割をになっている画家なのだ。


倉澤先生が推薦した生徒が面接試験を落ちるという事は今までないから、先生に太鼓判を押されれば、それは合格も同然という事になる。


「それならなおさら……そんな大変な事じゃないでしょう?」


「そうだけど。答えは変わらないと思うけどな……」


白川はメガネの向こう側でキッと俺を睨み、机からポンと飛び降りる。


「見せても無駄――」


「島の答えなんてどーでもいいです」