「あ……俺まだ完全に這い上がってないんだけど。落選したばっかなんだけど……。そんでもいいのか?」


腕の力を少し緩めて、見下ろした。


桜色の唇が小さく「バカ」と動いた。


「……さっきからバカバカ言いやがって。…お前って俺のコト好きなわけ?」


「……」


「明日になって、『やっぱ風邪みたいなモンだった』とか言うなよ?」


「……」


「あ…ヤバイ。おじさん、不安で眠れなくなりそーだ」


俺の腕のなかで頬を染め、照れたように眉間にシワをよせる彼女は――


「そんくらい…察しなさいよバカ!」


(ほら)


誰よりも美しい。