アパートに走り込んだ俺はクローゼットの奥の大きなダンボールをひっぱり出した。


「くそッ」


やっかいな程に厳重に丁寧に梱包されたそれをジリジリとした心を抱えながら、破くように乱暴に開けていく。


「、」


あの絵の梱包を解き、その姿に目を疑った。


そこには……再生された俺の絵があったから。


当時、展示期間を終え手元に戻ってきたこの絵をどうしたらいいのか分からずにいた俺に、酔っ払ったタローは『嫌味だよな』と口角をあげた。


それを合図に、自分の中に溜まっていた重たくてどうしようもない感情が爆発して、『なら、こうしてやるよ!』と俺は真っ黒な絵の具をぶちまけてしまった。


ただポッカリと心に空いた穴を埋めるように、グチャグチャと黒を塗り込んだ。


タローをビンタした母さんがその絵を親父の作品庫にしまって、事は一応収まったのだけれど。


もう二度とその絵を見ることはないと思っていた。


いらないのは絵であって俺じゃないんだ、と思いたかったんだ。