近づいてくる白川に新しい雑巾を差し出す。


そして「お前やっぱ知ってんだな」と呟いた俺の口を塞いだのは桜色の柔らかな白川の唇。


一瞬何が起こったのか分からなかった。


軽く触れるだけのキス。


離れていく桜色。


離れていく甘い香り。


訪れる少しの静寂。


「……」


「……」


「な…んでこの話の流れからこうなるのか……おじさん、意味が分からねぇんだけど…。また脅迫とか言うなよ?」


少し上ずった俺の声と対照的なしっとりとした彼女の声。


「慰めのキスだよ」


弧を描く桜色に魅せられてしまう。


「……あ…そう。そりゃどうも」


限界ギリギリのポーカーフェイスの下で、心臓が口から出てきそうな俺をさらなる攻撃が襲った。


「なんて嘘」


「え?」