「……どうしたの、ジロー」


ただでさえ暑いのに、急に俺の周りだけさらに気温が上がったような気がする。


(だって絶対に寝てると思ってたし)


「なぁ、……すっげぇ恥ずかしい気がすんだけど、俺」


「…あ、階段で転びそうになって『ぐおっ』って唸った事が?気にしなくていーんじゃない?よくある事だし」


「……」


「じゃあ、ベッドに寝かせたあたしの服を代えてやるべきか悩んで、『……できるか、バカ…』って自分にツッコミ入れた事?」


(……ああ、しかも全部覚えてやがる。またこれをネタに揺すられたりして――)


「てめぇ!すっげぇ重かったんだぞ。駐車場からここまでお前運ぶの!」


服だってなぁ!親切心で――と大きめな俺の声を遮るように、白川は俺の唇に指を当て「嘘だって!」と眉間にシワを寄せる。


(何が“嘘”なんだよ。コノヤロー)


「…あたし“ありがとう”って言いたいだけだったんだけど」


「はあ?……え?マジで?」


コクリと頷く白川に脱力する。