「俺なら『生きてる間に来いよ。口きけなくなってから来るなって卑怯じゃねぇか』って思うけどね」


(だよな)


「いまさら何の用だよって思うけどね」


「……」

まさにその通りで。

だから俺は答えも見つけられないんだ。


黙っている俺を茶化すようにタローが覗き込む。


「あ、泣いちゃった?泣き虫だな、ジローちゃんは」


「泣いてねぇよ」


「ふ~ん。つまんないの。てか、泣いてないなら、どけよ」


タローはフンと鼻を鳴らすと乱暴に俺に前に立ち、俺の手向けた仏花の前に自分の花を静かに寝かせた。


「すぐ枯れちゃうな、これじゃ」

しゃがみ込み、こう軽く呟いて両手を合わす。


ならば俺の菊を抜いて、そこに自分のバラをさせばいいだけの話なのに、そうしない。


(タローは本当に分かりづらい)


墓前で目を閉じているタローの横から、俺は自分の手向けた仏花を抜き去ると地面にドサッと落とし、代わりにバラをそこ挿した。