ズキンと脈打つ頭の痛みをこらえて玄関でサンダルをつっかけようとした俺を


「いーよ。こんな酒臭い人と歩きたくないし。寝てなよ」


となんともまあ軽くあしらい、「でもさ」と呟く俺の胸を強い力で押し返して彼女はドアの外に消えていった。


とりあえず何事もなくすみそうな感じだけれども、小さな罪悪感と敗北感が胸に残った。


(はぁぁぁぁ)



部屋に戻るとなまめかしいほどの情事の痕跡に眉を寄せる。


現実はドラマみたいに綺麗なもんじゃない。


それが二日酔いと重なって軽く吐き気を誘う。


「あ~、面倒くせ……」


窓を開けると冷たくやわらかい春の風が頬を撫でていった。