「いいです。あたしもう帰りますから」


柔らかい空間にそれを拒絶するかのように響く凛とした声。


「でもお茶ぐらいは――」


「帰ります、あたし」


なぜかその視線は刺すように厳しくて。


無言の俺と香織に構うことなく白川は持っていた荷物をドサッと置くとドアを押していく。


(聞く耳もたずって事ですね)


「じゃ、俺も帰るから。お前体大事にしろよ?なんかあったら連絡してこいよ?」


「うん。いつもありがと。…ジローあのさ、こんな時間まで生徒連れ回しちゃダメよ?分か
ってるよね?ちゃんと送ってあげてよ?」


「あ、それはもちろ――」


そう答えた俺を見事に遮ったのは開け放したドアの前に立つ白川だった。


「あたし子供じゃないですから。送らなくて大丈夫ですから。じゃさようなら」


「ちょ、待てコラ!じゃ、わりィな、香織」


スッと消えてしまった白川の後を慌てて追った。