「あッ!ジロー君、久しぶりじゃない?」


和服姿のユカリさんがにこやかに笑う。


「あ……」


(居た)


あれから一度も訪れていなかった紫苑。


驚いた顔で一瞬固まった白川は、大人っぽい化粧を施して“アンちゃん”になっていた。



「マジかよ。本気で女の子ひっかけないの?ジローが?」


大げさにびっくりする修二を


(うるさい!黙れ、コラ)


軽くチョップすると、白川が眉をひそめて事務的に「こちらへどうぞ」と言った。


ビールジョッキ片手に「いやいやジロー君に乾杯!」なんてふざけた修二の肩越しに見えるのは――


30代と思われるサラリーマン風の男に

『アンちゃん最近居なかったよね?アンちゃんいなくて寂しかったよ~』なんて軽く手を握られて、


『ちょっといろいろあってお休みしてました』と営業用スマイルしている彼女。