「分かってるけど、止められないの。やっぱりどっかで美術に繋がってないと不安」


「うん」


「優等生じゃないと不安。あたしはサチより愛されたいの」


完璧な笑顔を作る目の前の白川は痛々しい。


たぶん普通の家庭に育った子はこんな風に感じないのに


それに気づきさえしない。


なんちゃって、と笑い声と共にスカートをひるがえす。


ドアを開けて「じゃ、さよーならー」と見せた笑顔に


(泣けばいいのに)


……そう思ってる自分にひどく困惑する。


「気ィつけて帰れよ?」


「はーい」


視線がからめば胸がドクンと音をたてる。


そんな顔ばっかりするから


そんな顔ばっかり見せるから


(泣けよ)


泣いてるみたいに笑う顔が脳裏に焼きついてしまうじゃないか――…