その日のデッサンを終え、普段通りモチーフの片付けをしていると白川が「よくある話だけど」ふっとやわらかい表情を見せた。


「あたしっていやな姉なんだ」


「自覚してんの?」


「うん。サチって妹なんだけど。サチには絵の才能あるんだ。絵の才能って上手い下手じゃなくて、そういうのってあるでしょう?お母さんもお父さんも言わないけどきっとサチの未来を楽しみにしてる」


「……そう」


「サチは人見知りでのんびりしてて、だからいつも『アンナみたいにしっかりしなさい』て言われてるけど、あの子は愛されるんだ。何もできないのに。さらにね?その上絵の才能まであるの」


「……」


「腹立つでしょ?だから邪魔してやりたいの。あの子が美術の道を歩むなら、あたしもその道を行くの。あたし……きっとサチの事嫌いなんだと思う。醜い嫉妬の塊なんだ、あたし」


「……う、ん」


相変わらずやわらかい表情のまま静かにつむがれる言葉たち。