いつの間にか眠っていた。




優しい、優しい、夢を見ていた。







「……?」




握った綾ちゃんの手に違和感を感じて、目を開ける。




弱い、弱い力だけど。



微かに俺の手を握り返している。




慌てて飛び起き、綾ちゃんを見る。




ぼんやりとした目で、俺を見ていた。





「綾……ちゃん?」




「あは……絢くんだ…」




数年ぶりに聞いた彼女の声に、涙が零れ落ちる。




「やだ、何泣いてんの」




そう言いながら俺の涙を拭う綾ちゃん。





「っ……」






いつか君が目を覚ましたら、どんな顔したらいいんだろう。



初めに何て言えばいいんだろう。





そんな事を考えていたのに、今は何も思い浮かばない。




初めに見せたのは、寝顔で。



その次は、泣き顔で。




散々じゃん。




笑って迎えられたら、カッコ良かったのに。