「嘘だろ……嘘って言えよ!」




机を叩いて母さんに詰め寄る俺に、瞳を伏せて首を横に振る母さん。




そうだ、怜夏…。



俺達が会う前から海來と友達なら、何か知っているかもしれない。




そう思って、震える手でスマホをポケットから出した。




そしてアドレス帳から、怜夏の電話番号をタップする。




耳元で聞こえる機械音。




『もしもし?』




「海來が!
…記憶喪失ってこと、ないよな……?」




頼む、違うって言え。



“何言ってんの、バカじゃない?”



って…。


いつもみたいに笑い飛ばして…。







電話の向こうの沈黙が何を表しているかに気付きながらも、そうでないことを願う。






『誰から…聞いたの?』




少し震えた声に、現実を突き付けられる。




「…じゃあ……海來は、羽海なのか…?」