「嘘……だろ?」
すべてを話し終えた母さんの目を、見つめ返せない。
手が震える。
冷や汗が出る。
記憶がない?
羽海?
知らない…そんなの。
「信じる信じないは晴斗の自由だけど…。これが真実よ」
「だって……、だって海來は記憶があった…」
「…記憶がないって、知られたくなかったんじゃないの?」
違う、そんなわけ…。
「嘘だろ?…笑えないって、こんな冗談…」
でも。
それが真実だとしたら、全てのつじつまが合ってしまう。
初めて会った時、俺を知らないと言った海來。
海に行くなと、叔母さんに言われた海來。
夜景を見て、涙を流した海來。
突然、公園に来なくなった海來。
本当に俺を、知らなかったのか?
海に行ったら、記憶が戻るヒントになるのか?
俺に会うことも、記憶のヒントになるのか?
海來が来なくなったのは、俺のせいなのか?