【霜月海來side】
そうか、あたしは…。
今蘇った記憶を受け止めきれなくて、砂浜に座って海を見つめていた。
どれくらい経ったのかわからない。
最初から冷たかった風が、さらに冷たく頬をさす。
零れる涙を拭くこともなく、ただ海を見ていた。
「…海來ちゃん!?」
その声にハッとして振り向くと、怖い顔をしたおばさんがいた。
慌てて立ち上がると、おばさんは怒りながら駆け寄ってくる。
「海來ちゃん……海に来るなって言ったわよね!?」
「っ、ごめんなさ……」
「…思い出したの?」
肩をつかむおばさんの迫力に、声が出せずに力なく頷く。
「……とりあえず、帰るわよ」
おばさんに腕を引かれて小走りをする。
来たときは朝だったのに、時計は既に午後7時を指していた。