「海來~っ!」
「ぅわっ…!?」
後ろから急に抱き付かれ、慌てて振り返る。
「怜夏!」
「おはよ~♪」
いつも通りの怜夏に、ホッとする。
「怜夏、早いね」
「海來こそ!早く海來に会いたいって思ったら、早く起きれたんだよ♪」
「な、にそれ…」
嬉しかった。
嬉しくて、泣きそうになったのを必死に隠した。
「…怜夏」
まだ同じ高校の生徒はいない通学路をしばらく歩いて、学校が見え始めてから口を開いた。
「あたしの記憶のこと、知ってるでしょ?」
「…うん?」
何かを察したのか、真面目な顔つきになった怜夏に、続ける。
「誰にも言わないでほしいの」
「…言わないよ。海來が嫌なら、するわけないじゃん。……でも、」
“でも”という言葉に怜夏を見ると、怜夏は前を向いたまま言った。
「みんななら受け止めてくれると思うよ?」
「……うん。でも、言わないで」
わかってるんだ、そんな事。
あたしが一番わかってる。
だけど知られたくないよ。