「そろそろ帰るか」




晴斗のその言葉は12時の鐘で。




晴斗に続いて乗った自転車はカボチャの馬車で。




大丈夫、忘れられる。


何年かかるかもわからないけど。



忘れられないかもしれないけど。



何年も経ったらきっと、



全てが夢物語みたいに思えるでしょ?




だから、最後くらいは…。





キキィッ、と音をたて、あたしの家の前で止まった自転車。





「晴斗、ありがとう」




最後くらいは、とびきりの笑顔で。




あなたの記憶に、あたしが残りますように。



少しでも綺麗に、あなたの目に映りますように。


この一言で、たくさんの“ありがとう”が伝わりますように。




あなたが、幸せになれますように。