使われていない教室に入ると
すぐ傍にある机に寄りかかる優夜。



「ごめん、姫乃。怖かったよね」


俯いたままの私の手を
優夜の大きな手が包む。


目線がいつもより近い。



「だから嫌だったんだよ。姫乃が注目されて、こうなるような気はしてたから」



“だから嫌だった”

それを聞いて、昨日の会話を思い出した。


ーーー『オレも嫌だよ』


あの時の言葉は
こういうこと……




「今日、来てからずっと耳障りな声ばかり聞こえてきて……」



俯く優夜の顔が見えない。



「オレ、まじでそいつら殴りたかった」


いつも優しいはずの優夜から
そんな言葉を初めて聞いた。


「優夜が出るって言ったんだよ」


「うん。後悔してる……ユリちゃんたちがあの写真使うとは思わなかったから」



「あの写真って……」


「気づかなかった?あれ、オレと居る時の姫乃だよ」



優しく微笑むような優夜が
なんだか寂しそうに見えるのは何でだろう……



あの掲示板に貼ってあるのは
自分でも驚くほど笑ってる写真だった。


あんな顔ができる自分にも驚いたけど、あれが優夜といる時の自分だなんて……