首関節をコキコキ鳴らすと健人は去り際、股間を押さえる痴漢の肩に手を置き、目前に掌を出す。「ねえ、オジサン?
もし次、見かけたらさ」開いた手は何か握り潰すかの様にゆっくりと握り拳を作り上げてゆく。
「こうなっちゃうよ?」それが何を意味しているのか、痛みによってただでさえ青ざめている顔が更に青白くなる。
「痴漢アカンって言葉…あるじゃない?今日よくその言葉考えて?」
ウフフ、と健人は上品に笑うとトイレを出た。
これで痴漢は1人減る、少なくとも姉ちゃんには手を出さないな。
「健人君…良かった。
大丈夫?」
由衣は心配そうな表情で駆け寄る、さすがに心配でも男子トイレには入れない、きっとトイレ前でウロウロしていたのだろう。
「うん、心配させて
ゴメンナサイ」
「健人君が無事なら良いもし何かあったら里緒菜ちゃんやオバサンに顔向けできなくなるもの」
「…俺は大丈夫だから」俺と由衣さんが話している横を変な歩き方で痴漢が怯えながら横切る。
「あ、あの人。
健人君が一緒に…」
「ああ、あのオッサンはもう人畜無害だよ。
しばらく不能にしといてあげたから」
「不能?」
「由衣さんは考えなくていいよ、うん」