とぼとぼと暗い夜道を歩く。 頬に一筋の涙が伝った。 声をあげて、大きな声で泣き叫びたかった。 だけどそんなこと出来ない。 もう一人の私がそんなことさせてくれないの。 だから、静かに声を殺して泣いていた。 その時だった。 「…繭!」 誰かが後ろから走って来て、私を抱き締めた。 …それはすっかり慣れてしまった温もり。 私を包む引き締まった腕も全部… 朔弥のもの。