「行きたいね…あっちに」
「…ああ」
俺のこんな考えに賛同してくれるのは、
幼馴染であるアイカだけだった。
何人かは、希望も無い目で俺のことを
変だと言った。
「向こうの世界に行く方法が分かれば
今すぐ行ってやるのに。文献には”時期を
待て”としか書いてないし…」
俺はため息混じりの声で言う。
アイカは顔を苦め、不安を漏らした。
「向こうの人達はいいね。そんな明るい
場所で、楽しく暮らしてるんだもんね。
同じ人間なのに、何でこうも違うのかな…」
こちらの世界はすることもなく、毎日
黒い空を見上げ、古代の本を読み、寝るの
繰り返し。そして、同じ人間の夢を見る。
その人間が、向こうの世界での自分じゃ
ないのかと俺は信じている。
「…」
何も変わらない空。
何かを訴えているようにも見えた。
俺は文献を読むためにレンさんの
家へ向かった。
「シュウにアイカじゃないか」
「本を読ませて欲しいんだけど」
レンさんは俺達を見て笑った。
レンさんは俺の兄貴分的な人で、
身寄りがいない俺を育ててくれた。
こんなに明るい人を、俺は今まで
見たことがない。
「あぁ、いいよ。そこにある」
レンさんは自分の右にある戸棚を
指した。俺達は礼を言ってから本を
とって読み始めた。
”闇と光。2つが1つになって
世界になる。君達のいる場所は世界
じゃない。世界の裏なのだ。時期を
待て。全てが解決する時が来る。”
何度読んでも不思議な文章。
時期って何?何をすれば向こうの
世界に行けるんだ?
俺が本に読み入っていると、
レンさんの家の扉が開いた。