こうして考えてみると、卒業式の日に休んでしまって良かったのかもしれない。

どうしても伝えておきたいと思っていたけど、きっと先輩を困らせることになってた。


「…じゃあ…もう帰ろうかな…」


藤田先輩には悪いけど。

そう思って校門に背を向けた時だった。



「あれ?安藤くん?」


ばっと振り向くと、そこには俺の〝好きな人〟がいた。



「どうしたの?」

「いや…あの…」


タイミング悪…。

もっと早く帰っておけば良かった。


俺がたじたじしていると、先輩は冗談っぽく笑った。


「あっ!もしかして、私に会いに来てくれた?」

「…そんな…ことないですよ…」

「あははっ。だよねー。でも、せっかくだから少し話すー?」


俺の返事を聞く前に、先輩は「ここはちょっと邪魔になるから」と俺を手招きした。