先輩は、しばらく後ろを振り向かないで、すたすたと歩いていた。

けど、いきなりくるっと振り向いて、口パクで『がんばれよ』って言ってくれた。



―藤田先輩は、優しいなぁ…

改めてそう思った。

今思えば、宮下先輩に会えたのも藤田先輩のおかげなのかもしれない。





まだ俺が1年生の時だった。

サッカーの練習をしてる時に声をかけられた。


「あのさ、吏渡。」

「なんですか?」

「体育委員…入ろうぜ。」

「え…でも俺はもう決めて…」

「な?」


思わず頷いてしまったのが始まりだった。


体育委員はとてもめんどくさいらしく、立候補する人が少ない。

毎回押し付け合いになってしまうのだが、藤田先輩はじゃんけんで負けたらしい。


そこで、俺にめんどくさい雑用を手伝わせたかったんだと言うことだ。