「もうやだ…」


ある年の3月9日。

自分の部屋のベッドの上で俺、安藤吏渡は何度目か分からない溜息をついた。


けほっけほっと少し咳き込むと、ごろんと寝返りをうつ。

頭が重くて、くらくらする。

完全に…風邪をひいてしまった。



いつもだったら、風邪をひいたぐらいでここまでは落ち込まないけど、今日は特別な理由があったんだ。




今日、3月9日は俺の学校は卒業式だった。

在校生として、1年と2年は式に全員参加。



俺は、式が終わったあと、好きだった先輩に想いを伝えようと思っていた。




―それなのに。

何で風邪ひくんだよ!!

ありえないし!!


俺はぶつぶつ言いながら、もう一回寝返りをうった。