「はぁ?!」

さすがにイラついた私は勢いよく椅子から立ち上がった。

バタッ

「あ…、」

男がいきなり声を出した。
目線は床。


下を見ると‘cross road’のファイルが落ちていた。
cross roadは私が唯一好きになったロックミュージシャン。

去年の夏のライブに行ったときからすっかりファンになった。




「なぁ、もしかしてcross roadのファン?」

男はさっきとは違う優しい声で私に聞いてきた。

「そうだけど?あんたも?」


「おう!!すっげぇ好き。いいよなぁcross road。」


男は椅子から立ち上がって私のファイルを拾った。
さっきの冷血な男とは考えられないほど見違えた態度。


「なんだ、意外に良い奴じゃん」


思わず声に出てしまった。

「何だその上から目線は。ホラ」


男が外していたイヤホンを差し出してきた。



流れてたのはcross roadの曲。



いつもはロックテイストなcross roadが初めてバラードを出したときの歌だった。私はこの曲が一番好きだった。


「俺、この曲が一番好きなんだ」



ドキッ