「え、じゃあ、このまま生かして帰してくれるんスか?」

「そりゃあテメェ次第だ。キティは、どうした」

「あ、申し遅れました。俺、リムゾンっていいます。通り名は"赤い弾丸"。って言っても弾まで赤く塗装してるわけじゃあないんスけどね~」

「聞いてねぇよ、そんなこと!つーか、聞け!人の話を!!」

「リグレイ!」

 イッシュが叫んだのと同時にリムゾンと名乗ったガキが視界の端に跳び退いた。イッシュが脇から切りかかったからだ。

 よく見りゃあのガキ、赤いのは髪だけじゃねぇじゃねーか。銃の塗装まで赤かよ、趣味わりぃ。

「いつまで敵の話につきあっているつもりだ、武器はどうした!」

「わりぃな、ガキ一人相手に使いたくねーんだわ」

「………わかった、俺がやる」

 "やる"が"殺る"の方じゃないといいんだが…殺っちまったらキティの安否聞き出せねぇし。

「で?リムゾンくん、だったか?いい加減吐けよ。キティはどうした。サッサと口割んねーとその色男、本気でお前のこと殺っちまうぜ?」

 つーか、答え様によっちゃあ俺が殺るけどな。キティに何かしてみろ、ただじゃおかねぇーよ。

「あ、ほんとだ。おにーさん、よく見たら男前っスね…って、あぶねっ」

「無駄口を叩いている余裕はないだろう」

 イッシュの剣の先が奴の頬を薄く切る。リムゾンは垂れてくる血を舐めとって楽しげに笑った。イッシュの剣がこのガキに触れたのは、これが初めてだ。やはりガキだからといって嘗めてかかれる相手ではないらしい。避けるばかりで攻撃してこないのも、かえって気味が悪い。

「キティ姐さんだったら、ここには居ないっスよ」

「…は?」

「それっぽい人にカマかけてみたらホントにそうなんだもんな~……あ、もしかしてわざと引っかかってくれたんスか?」

 間の抜けた声をだした俺と呆れたように溜め息を吐いたイッシュ。

 考えることは二人いっしょだ、たぶん。イッシュが剣を鞘におさめたのが、その証拠。

「じゃあ戻るか、宿に」

「ああ…やはり罠だったな」

「お前の言う通り、な。殴っていいぜ」

「いや、遠慮しておく」

「え、ちょ、お二人さん!?ちょっと待ってよー!もう少ーし遊んでくれたっていいじゃないスかぁ!!」

 戦意喪失、帰る気満々な俺たちの態度に赤髪は文句を言ってきたが構やあしねぇ。キティが無事だとわかった以上、こんなガキに用はねーんだ。