間延びした物言い、薄明かりの中でもわかる赤い髪。背格好からして年はイッシュと、さほど変わりがなさそうだ。

 こんなガキが軍人…?キティが言ってたような気がするが"グレイ師団"っては、ちっとばかり腕に自信のあるガキどもの集まりなのか?まあ、キティの口振りからして強いことには強いんだろうが。

「剣のおにーさんはしらないけど、そっちの黒いコートのおにーさんのことは、俺、知ってますよー?」

「んなこたあ、どうだっていい。キティはどうした」

「まあまあ、そう焦んないでよ。ちょっとお喋りにつきあってくれません?」

 赤髪は楽しげに笑いながらそう言うと屋根から飛び降りて俺に近づいてくる。

 おい、とイッシュが俺を呼ぶ。大丈夫だ、という意味を込めてヒラヒラと手を振った。見えたかどうかはわからないがリアクションがないってことは、たぶん見えたんだろう。

 赤髪が目の前までやってきた。手には銃が持たれたままだったが銃口がこちらに向けられることはない。俺の手は背中の相棒へ。

 こうして、すぐ目の前で見ると、やはり若い。

「"グラン隊"の"リグレイ"さん、」

 得物を握る手に思わず力が入った。

 なぜ。

「俺の、名前、」

「よーく知ってますよ、貴方のことは。グランさんから耳タコなくらい聞いてるんでね」

「……グランは、」

「ご健在っスよ。そりゃあもう、お元気なことで。いっつも説教されるんスよね~、"お前さんは早打ちじゃあキティの次に抜きんでるもんがあるとは思うが命中率が低すぎる。俺の部下だった奴は早さはお前さん以上、一発だってはずさなかったぞ"ってね」

 キティが言っていた、師団には"白狩り"で動いた軍隊に属していた古参の兵も所属している、と。

 なるほど、そういうことか。

「あ、だから今日、あんたらの相手、俺一人だけなんスよねぇー。あんま部下連れてきても俺の流れ弾のせいで死なせちゃうんで」

「そいつぁ、いいこと聞いたな。だったら帰ってグランに伝えとけ、"あんたの自慢の元部下は、あんたのおかげで生き延びられた"ってな!」

 顎を目掛けて蹴りを一発。もちろん避けられたが間合いはとれた。こいつのノーコンが本物だっていうなら距離をとればとるほど相手の方が不利になる。