いい加減、立ちっぱなしで痛くなってきた足を砂の上でブラブラと振った。ザリザリと砂と靴の底が擦れる音が、やけに大きく響いた。

「砂埃がたつ、やめろ」

「ああ、うん、ごめん。で?またオレが訊いちゃダメな内容?」

「そのうち、わかる」

「じゃあさー、キティの"人捜し"の一人目ってオレだろ?なんで、あのおねーさんはオレなんかを捜してたの?」

「それも、そのうちわかるだろ」

「………なんかイッシュって結構いい加減な」

 やばい、足限界。

 しゃがみこんでイッシュを見上げた。

 そのうちわかる、とか直線キティから聞いた方が、とか。自分で話すのが面倒だからキティに丸投げしてるのかもしれないけど。

 見上げた先のイケメンくんは、まるで初めて聞く言葉だとでも言いたげに目をパチパチとさせていた。

「そうか…?」

「そーだよ、少なくともオレは、そう思った」

「初めて言われた」

「うん、そういう顔してる」

「……悪い」

「謝られても」

 なんか調子狂うなー、いい奴だとは思うんだけどなー。

 頭の後ろをガシガシと掻き回す。

 イッシュも少し困ったような顔をしていた。

「…………疲れたなら、座るか?」

 イッシュが指さしたのは酒場の前にある古びたベンチだった。色は、もちろん黄色の。言われるまで、そこに在ることすら気づかなかった。

 オレは短く返事をして壊れかけたベンチに勢いよく腰かけた。きしみはしたが全壊する様子もない。

「イッシュは?座んねーの?」

「いや、俺はいい」

 隣をポンポンと叩くとイッシュは緩く首を横に振った。

「そ?そんな重そうなもん腰に下げてて、よく平気だな」

 剣を指さすと"ああ、"と気の抜けた返事をして柄を撫でた。

「そうでもない、慣れだ」

「慣れ、ね」

 オレの短剣は、そう重そうにも見えないし実際そんなに重くもないけどオレにとっての剣は"自分の身を守る道具"というよりは、やっぱり"凶器"でしかなくて持ち歩くことが怖くなることさえある。

 イッシュは、この剣で人を斬ったりすんのかな。

 ぼんやりと、端正な横顔を見つめながら思った。