「佐伯君!!」

その霧島さんの叫びにハッと我に返ると、勢いよく後ろを振り返った。

しかしそこには……何の姿も見えない。

「須藤さん!!しっかりして下さい!!」

抱いていたコウモリを霧島さんに渡し、血だらけの彼を抱き起こすと、そのまま引き摺る様にビルの陰へと身を隠す。

「……須藤さん!!」

必死に彼を呼びながら彼の怪我の状態を確かめようとしたが……すぐに俺は残酷な現実を理解した。

茫然と彼を抱えたまま、言葉を失う。

その間も彼の流す温かな血が俺の服を濡らし、もう二度と感じたくないと思った不穏な感覚に、カタカタと身体が震えた。

すると須藤さんはそんな俺を見上げ、力無く笑って見せる。

その笑みに俺は、もう彼が助からないという事を……なんとなく理解していた。

次の瞬間、須藤さんはとても真剣な顔をして、震える唇を開く。

彼は俺に何かを伝えようと必死に口を動かすが、そこからは擦れた吐息が洩れるだけで、彼の言葉が聞こえる事はなかった。