「……何やってんだよ!!」

その突然の怒声と共に、グッと腕を引かれた。

俺の腕を掴んでいるその手は、ちょうど数本の木々が密集して生えている小さな林の様な所から飛び出し、そしてその中に俺を引き摺り込む。

「こんな所をフラフラ歩いてたら殺されるぞ!!狙撃されたらどうすんだよ!!」

まるで咎める様なその声の主へとそっと視線を向ければ、そこには一人の男が立っていた。

黒い癖っ毛の髪に微かに生えた無精ひげ。

年は……27の俺とそう変わらないと思う。

Tシャツとジーパンとラフな格好をしているが、その服はかなり薄汚れている様に見えた。

その男は《有り得ない》とでも言いたげな顔で、俺を真っ直ぐに見つめている。