何かを見ていたわけじゃなく、ただ頭上にある黒を見ていた視線を少しずらす。




「あれ、シカトですかー」




言葉を発した後に聞こえる微笑。口元が歪んでいたとか、肩が震えていたとか、見えるわけじゃない。


だけど、伝わる空気でそう感じてしまった。ヒトの気配を、その胎動を。



「…」



カツ、カツ、カツ、


徐々に近づいてくるそのヒトは、確実にここに向かっていた。







「みーえてるよー」