私が岡崎さんに気持ちを伝えたら、近い将来二人は付き合う事になるのだろうか。しかしこれを口にしてしまったら、この空間にきっと葵はいない。それだけは確かに感じていた。それでも私の頭の中では葵ではないあの人への、期待や願望、夏の手前の、胸騒ぎのような高鳴りだけが、どんどんと育っていった。もしも岡崎さんと過ごせたなら。嫌いな夏も好きになれるだろうか。
真夜中、寝苦しさで目が覚めた。隣では葵が静かに眠っている。
私は葵ではなく、あの人の事を好きになったのか。
夜の紫がかった黒が、朝に撫でられて直に朝焼け色に変わろうとしているまだ世界が二人だけの時間。私のこの我が儘は、そっと夜の中に残しておこうと思い、またゆっくりと瞼を閉じた。