「葵、少し具が多いよ」
チーズを多めに入れ過ぎたのか、皮から具がはみ出てきている。葵が包んでいる途中の餃子を受け取り、整えてからお皿に並べる。岡崎さんと一緒に餃子を包んだら、楽しいだろうか。
形が整っているものと少し歪なものが、お皿に並べられていくのを見て、少し涙が出そうになった。何故私は今、岡崎さんのことを考えているのだろう。目の前では葵が私の様子がおかしい事に気付く。
「綾女ちゃん?」
「・・・・・」
「どうかした?」
 私は後ろめたい笑顔を綾女に見せた。
「何でもないよ。さ、そろそろ焼き始めようか」
 フライパンにごま油を入れて、二人で包んだ餃子を並べて行く。葵が包んだものには必ずチーズが入っていると分かっているので、これでは当たりの意味がなくなってしまうと少しだけ可笑しかった。水を入れて蒸し焼きにすると、ジュウと美味しそうな音がした。腕に油が飛んでくる。葵に見つからないように、そっと目じりに指先をあてた。