綾女ちゃん、お帰り」
 栗色の髪の間から、私の姿を確認する。
「珍しいね。迎えに来てくれたの?」
「うん。何となくそろそろかなって思ったから、出てきてみた」
 きっと近所の猫を伝たって、私が帰って来るのを教えてもらったのだろうと、本気で思う。
「ありがとね」
葵は私の肩にかかったトートバックを自分の肩に移しながら
「それにやっぱり朝の事、心配だったから」と言った。
 私は知らない間に、周りの人に心配をかけているのだなと、反省する。
「ああやって言って貰えて良かった。あ、帰ったら一緒に餃子作ろうね」
 餃子と聞いてまず葵は
「チーズある?」と聞く事を知っている。
 バックの中を覗き見る目が輝く。
「もちろん。・・・今朝はごめんね」
 まるで良いよと言う代わりに、葵の優しい笑顔が目の前にあった。
 その笑顔を見ながら、きっと葵は、夏よりも秋に散歩するのが好きだろうなと、同時に考えていた。
 キャベツと二ラを塩揉みしてから水気を切り、引き肉と一緒に粘りが出るまで良く混ぜて行く。塩コショウをして、ニンニクとショウガを加える。隠し味としてオイスターソースを入れると、ジューシーに焼き上がる。
葵が餃子の具を皮に包むのを見守りながら、岡崎さんはきっと不器用だろうなと考えた。