目元が優しくなったのは、きっと昔ほど気を張っていることが少なくなったからだろう。
「半日だけだったけど、お前が後輩にどんな風に思われているかは、分かったよ」
 飼育セットを移動した後、殆ど店内で話す事はなかったが、自分の職場に昔好きだった相手がいると思うと、残りの半日落ち着いてはいられなかった。
「面倒見も良いし、だからバイトの子達にも頼られているんだろう」
「皆、ちゃんとやっていますから。それを手助けしてあげているだけですよ」
 モスグリーンのネクタイが、少し緩んでいるのが見える。気恥ずかしくて触れた髪からは、岡崎さんの煙草の匂いがした。
「それに、こんなに綺麗になっているんだから」
岡崎さんが私を見て、はにかみながら困ったようにまた煙草に火を付ける。くすぶった思いが弾けるのではないかと、心を押さえるのが必死で、言葉が出なかった。