「どうして、純さんがここに!?海外に行くって……!」






「ん~、海外に行くのはやめたんだ。好きな人と結婚したからさ」






そう言って左手の薬指にはめられた指輪を見せる。






「結婚!?あの純さんが?」






純さん。彼はよくボクが小さい頃遊んでくれた人だ。






母さんと仲がよかったらしく、よく母さんの相談にのっていたらしい。






彼の後押しがあって母さんは父さんと結婚したんだって。






……もう二人はいないけど。






「…君は八神家にひきとられたんだね」






その言葉に目を伏せる。






「……はい。養女としてひきとられました」






海外に行かなかったなら純さんは、どうして……





どうして、お母さんの葬式に来なかったんですか?





いいそうになった言葉を慌てて隠す。






「……君のお母さんはいつ亡くなったんだ?」






「ボクが5つのときでしたから、十一年前の春のことです」






そう。






確か……桜が満開だった。