「なぜ俺を知っているんだ?
そう言えば、あの女も名前を知っていたな。」


正直名前を言い当てられた事には、俺も驚いた。

だって奴らがのぞき見した腕のパスには受験番号の他何も書かれちゃいない。

けど、こんな間抜け面目の前に並べられると、人のふり見て我がふり直せってな感じで気をつけようって気にもなるもんだ。

結果、我ながら冷たく問い返していた。


「そ、それは、番号を見たから……。」


だいぶ間があってから、かなりおどおどした調子で一人が応える。


「どうして番号だけで名前が分かったんだ?

まさか皆他人の番号まで暗記しているとか?」


エリートと言うのは何を常識と言いだすか分かったもんじゃない。

全受験者の8桁の番号と名前を覚えていると言い出す事も十分あり得る。

だけどそれって、かなり無駄な作業だぜ。

コモンランゲージの辞書30巻を丸暗記しておくほどには労力は使わないにしてもメリットはほとんどない。

試験が終わる明日には全く必要なくなる情報だし、名前なんて知らなければ尋ねればすむ話だ。


奴らを見据えながら左腕のパスをいじっていると、もう一人がやっと説明を始めた。