ユウの言葉が信じられなかった。
 動物の肉を食べるなんて、聞いたこともない。瞬間に、鳥肌が立った。
「駄目よ、あんな小さい生き物を殺すなんて!!」
 だが、言いおわる前に、矢はボウガンを放れ、狙いを過たずに親ウサギの背中にあたった。
「!?」
 すぐにユウが、ウサギのところに走っていった。子ウサギはすでに逃げていた。
 ウサギの耳を無造作につかんで、ユウは平然とこちらに戻ってくる。
 マナは動けなかった。身体が震えていた。
 すぐ近くまで来た時、生臭いにおいがした。血のにおいだった。それが、ひきがねになった。
「なんてひどい!! 命を殺すなんて、最低だわ!!」
 叫ぶように、マナは言葉をぶつけた。
 ぶつけられたユウは、なぜそんなことを言われるのかわからないといった顔つきで、マナを見ている。
「何言ってるんだ? 食わなきゃこっちが死ぬんだぞ」
「自分が生きるために、他の生き物を殺してもいいって言うの!? そんなの間違ってるわ、おかしいわ!!」
「ウサギは貴重なたんぱく源なんだ。マナだって、食べればうまいって思うさ」
 呆れ返ったようにユウは肩を竦めた。
「信じられない、こんなひどいことするなんて。あたしはウサギなんか食べない。絶対食べないわ!!」
「わがまま言うなよ、マナ!!」
「自分で決めろって言ったのはユウじゃない!! あたしが食べないって決めたのよ。どうして怒るの!?」
 互いに睨み合ったまま、二人はしばし動かなかった。
 口を開いたのは、ユウの方だった。
「勝手にしろ!!」
 苛立たしげに足元の瓦礫を蹴りつけ、ユウはその場を離れた。
 マナはその場に座り込んで昨日に引き続き、声を殺して泣きだした。