以前学習した教科ディスクの中にあった映像を思い出していた。種類はもう覚えていないが、小さな可愛らしい鳴き声は、記憶の隅に残っていたのだ。
「なんていう鳥なのかしら」
 聞いてみようと思って、そこで、はたとマナは気づいた。
 ユウがいない。
 周囲を見回すと、奥のドアは開きっぱなしになっていた。
 顔を出して覗いてみると、そこは長い廊下だった。
 廊下の両脇の壁には、今マナがいる部屋と同じ造りのドアが等間隔に備え付けられていた。
「ユウ……」
 呼んでみたが、返事はない。
 左側に視線を向けると、階下へと通じる階段の手摺りに気づいた。
 たくさんのドアをあけてユウを探すより、まず下へ降りてみようとマナは考えた。
 マナは知らなかったが、この廃墟はかつては多くの人間が宿泊する場所として使われていたのだ。その階だけでも部屋数は多くあった。
 階下へ降りてみると、造りが変わっていた。外へ通じる、これまたガラス張りの入り口がある。広い空間だが、四方にどこへ続いているのかわからない細い通路がたくさんある。 階下へと通じる階段のすぐ隣の部屋の扉だけが開いていることに気づき、マナはそっと覗き込んだ。