「!!」
 その絶叫は、ユウの耳にはっきりと届いた。すぐに動く。
 フジオミを追って、ユウの姿が海へと向かう。
 二人の距離が見る間に縮まる。
 ユウが手をのばす。
 フジオミの腕を――掴んだ!!
「ユウーっ!!」
 マナの叫びとともに、激しい水音。
 飛沫が何度も海面を打った。
 マナはユウがフジオミを捕まえたとき、ほんの一瞬、落下の速度が揺るまったようにも見えた。
「ユウ…?」
 だが、二人の姿は見えない。
 マナはじっと待ったが、海はやがて落ち着きを取り戻し、波だけが穏やかにさざめいている。
 二人の姿は、見えない。
「いや…」
 膝の震えを、マナは止められなかった。
 心底恐怖した。
 フジオミが死ねば、全てが終わる。
「博士、おじいちゃん 救けて、どうしたらいいの。もし、フジオミが死んでしまったら、人が、終わるのよ……」

マナ!!

 突然マナは強い思念を感じ、振り返った。
 林の影、川と海が交わる場所に、ずぶぬれの人影が見えた。
 声を出さずにマナに手招きをしている。

 ユウだ!!

「――」
 マナはとっさに上を見た。
 ヘリの位置からすれば自分の姿も、ユウの姿も見えないはずだ。
 そっとヘリの視界に入らないよう、マナはユウのもとへと急いだ。