「殺したのか!?」
 蒼白となってフジオミが問うた。
「失敗よ。手応えがなかった」
 対するシイナは冷静だ。
 苛立たしげにフジオミの手を振り払う。
 邪魔をされて狙いが狂ったのだ。絶好の機会だったというのに。
「今度邪魔をしたらあなたでも撃つわよ、フジオミ」
 言いながら、風が吹き付ける開いた扉から下を覗いたシイナは身を強ばらせた。
 すぐ下に、ユウがいたのだ。
「!!」
 シイナはもう一度、今度は片手で銃を構えた。
「シイナ!!」
 ユウの鋭い叫びとともに機体が傾いた。
 シイナが足元をすくわれる。
「!?」
 シイナの身体が、一瞬空に浮いた。そのまま重力に引かれる――
「シイナ!!」
 とっさにフジオミはシイナの手を引いて中へ引き戻す。
 次の瞬間、激しい衝撃が機体を襲った。
「きゃあ!!」
 シイナは床に叩きつけられた。
「!!」
 フジオミがバランスを崩す。扉脇の手摺りを掴んでいた彼の手が、離れる。
「うわっ!!」
 彼の姿が、シイナの視界から消える。
「フジオミ!!」
 シイナが外へ身を乗り出す。
 どこにも、その姿はない。
 ただ、黒い塊が青い海目指して小さくなっていくのが見えるのみ。
 シイナの全身から血の気が退いていく。
「フジオミ――――っ!!」
 叫びが、大気を切り裂く。
 そして、マナも、その光景を見ていた。
 扉から飛ばされるフジオミの姿。遥か下は海。
 あの高さから落ちたのなら、救からない。
「いや…」
 マナが叫んだ。

「いや、救けて、ユウー!! フジオミを救けて!! お願い、死なせないでー!!」