木陰に消える小さな姿を追って、シイナは歓喜の声をあげた。
「マナだわ!!」
「シイナ、危ない!」
フジオミはシイナの腕を捕らえたまま、自分も下を見下ろした。
そして見る。
地上から真っ直ぐにこちらへと向かってくる、白銀の髪と、赤い瞳の少年の姿を。
「ユウ!?」
見つけたシイナの反応も速かった。操縦席へ急ぎ、叫ぶ。
「銃をかしなさい!!」
「シイナ、何を――」
振り返るフジオミは銃を手に立つシイナを見た。
「殺してやるわ。今度こそ」
銃を構え、開いた扉の向こうを、シイナは凝視していた。
「――」
上空に静止したままの機体の高さに、ユウはいた。
怒りに満ちた瞳が、シイナだけを見据えている。
対するシイナは、能面のような無感動な表情で、銃口を向けたままユウを見た。
二人の視線が、完璧に重なる。
どちらも決して、相手から目を逸らさない。
一瞬でも逸らしたらやられると、本能で悟っていたのかもしれない。
「どうして死ななかったの」
「!!」
そんな小さなささやきを、ユウだけが聞いた。
そしてそれが、あらゆるものの緊張感をやぶった。
「シイナ、止め――!!」
フジオミは、シイナの肩の震えで、トリガーを引こうとしていることをその瞬間、感じた。
とっさに触れた手から、衝撃が伝わる。
同時に、ユウの身体は糸が切れた人形が倒れるように唐突に視界から消えた。