「おいっ待てよ」

後ろから呼び止められた。
私はその声の主の方へと振り返る。
そこにはさっきまでいなかったはずの輝がいた。

「えっ、先に帰ったんじゃ...」

私は恐る恐る聞いてみた。

「はあ?
先に帰るわけねーじゃん。
約束だってしたんだし」

あの輝が私を待っててくれた事に驚いた。

「あ...そうだよね。
約束してたんだし」

輝は当たり前だろ。というような顔で私を見てきた。
私は輝と目が合った。
目が合ってるのに耐えきれず私は目をそらしてしまった。

「さ、行こっか」

私はそう言って歩き出した。

「どこ行く気?」

さあ。知らないよ。
と言えるはずもなく

「ごめん。
家に行こうとしちゃった」

と無理にごまかした。
さすが私!
頭の回転が速い。

「あれ、お前の家って逆じゃね?」

ええ...なんで私の家の方向知ってるの?
も、もしかしてストーカー?
でもまだ会って間もないし。
とりあえず何か言わなきゃ!

「あはは...そうだこっちだった。
最近ボケが始まったのかなあ...」

我ながら苦しい言い訳。
こんなんでごまかせるわけないよね。

「お前ボケって...早すぎるだろ」

普通に突っ込んできた。
い、意外だ。
こんな簡単なごまかしにだまされるなんて。