…懐かしい夢を見た。 「サヨナラ、美都。これでやっと自由になるわ。」 そう言い捨て、異様に膨らんだ茶封筒と、この家のモノでは無いカードキーを玄関の棚の上に置き、カツカツとヒールを鳴らしながら、振り返る事も無く出ていく女。 まだ幼さの残る私は、こうなる事を知っていたように、茶封筒とカードキーを持ち家の階段をゆっくりと登っていた。 何も映さない… 光を失った瞳で。 不思議と、涙は出なかった。